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『アガルタ通信』

『アガルタ通信』

サン・ラ

サン・ラを最初に聞いたのは10代の後半だったと思う。当時かなりの影響を受けていた音楽評論家中村とうよう氏が絶賛していた『アン・アーバー・ブルース&ジャズ・フェスティバル』という2枚組のアルバムで聞いたのだ。勿論お目当てはココ・テイラーだったりマディ・ウォーターズだったのだが、サン・ラも1曲入っていたのだ。その演奏は普通のブルース好きの少年には理解し難い、なんとも奇妙な音楽だった。それでもレコードだったので飛ばすのも面倒で聞いていた。何度も聴いているウチに訳がわからないなりに、妙に気になる存在になっていった。ジャズを聴くようになってからは植草甚一のエッセイなんかにサン・ラはよく出てくるので聴きたいと思ってはいたが、ほとんどチャンスが無かった。サン・ラより欲しいレコードが沢山あったからだ。しかし、1991年にエビデンス・レーベルからサン・ラの自主レーベルのサターンから出された音源が復刻されたときは、この時を逃すともう聴くチャンスは無いと思い。レコード屋にあったCD6枚を即クレジット・カードで買った。しかも次にリリースされる予定のものも注文したのだ。今でこそサン・ラのカタログは100枚以上あるが、当時はホントに少なかった。改めて聴いてみると、ジャズの魅力がギッシリ詰まった演奏で、完全にフリーのモノもあるが、俺が最初に聴いたのはサン・ラのほんの1部だったんだとわかった。最初のイメージって強烈だからなあ。あのまま改めて聴かなかったらサン・ラはオルガンがピーっとなって。コーラスが聞こえてきて、そのうち叫び声に変わりサックスがブヒブヒいう音楽だと思っていただろう。それこそジャズの歴史を聴いてるみたいに豊かな気持ちになる。コレクターでは無いので全部をそろえているわけではないが、レコード・CDはけっこう揃ってしまった。サン・ラは1988年に最初で最後の日本公演をやっている。ライブ・アンダー・ザ・スカイに出たときのTV放送は貴重な映像だ。そして新宿『ピット・イン』でも演奏している(DIWからCDが出ている)。サン・ラを『ピット・イン』で観れるなんて最高にうらやましい。その特異な衣装と自分を火星人だとか言ってしまう言動でうさん臭いと見られがちだったが死後、1部ではあるが、音楽は正当に評価されつつあるし、若い世代の人達は理屈抜きでサン・ラの音楽を楽しんでいると思う。現在もサン・ラ・アーケストラは存在し演奏し続けている。まだ聴いたことがない人は機会があったら是非聴いてみて下さい。


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